■■ Weekly Fax News 311,312 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 居住用以外の譲渡 ― 他の所得との損益通算不可に 」
(2)「『あてにしない』経営 」
(3)「 土地税制の改正 ― 短期の税率引き下げ 」
(4)「 大風が吹けば 」
―――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆「 居住用以外の譲渡 ― 他の所得との損益通算不可に 」 ◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
平成16年度税制改正案で見逃せない事項の一つに「土地、建物等
の長期譲渡所得の金額又は短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の
金額については、土地、建物等の譲渡による所得以外との損益通算及
び翌年以降の繰越しを認めない」とする改正事項がある。
この改正は、納税者に大きな影響を与えるものとみられている。政
府が閣議決定した「平成16年度税制改正要綱」では、住宅取得の支
援と土地取引の活性化を図るため、居住用財産の譲渡損失を一定の要
件のもとで住宅を売った年及びその後の3年間の総所得から控除でき
る制度を拡充・創設するとし、「個人の居住用財産の買換えによる譲
渡損失については、売却物件に住宅ローンがなくても(買替物件には
住宅ローンが必要)、繰越しを認めるほか、買替えを行わない場合で
も、譲渡価格を上回る住宅ローンの残高があるときには、その差額を
限度として、譲渡損失の繰越控除を3年間みとめるなどの特例措置を
講じる」としている。
しかし、その一方で前述のような賃貸物件や未利用物件の譲渡損失
について、短期・長期にかかわらず譲渡所得以外との損益通算を認め
ない措置を講じ、しかも、平成16年分以後の譲渡について適用する
とされている。
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 「『あてにしない』経営 」 ◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
人は自信のあるものによって失敗することが珍しくない。腕に自信
のある者はその腕によって、財力に自信のある者はその財力によって、
酒に強い者はその酒によって、事故や事件に巻き込まれたりする。
健康等も同様で、若いことをあてにしたり、胃腸や足腰が丈夫なこ
とをあてにしたりしている者は、かえって簡単に体を壊すことがある。
貝原益軒『養生訓』にも、「養生の道はあてにしないことなり」とあ
る。
会社の経営方針や経営戦略を見ていて気づくことがある。経営体質
や経営管理のバランスが偏っている会社の場合である。人材の豊富さ
をあてにして資金繰りを疎かにしたり、逆に資金の豊富さをあてにし
て人材確保を疎かにしたりするなどである。
当然ながら、あてにしていた人材が次々に退職したり、土地や株の
投資等の失敗したりすると、経営が簡単に崩壊する。
企業再生支援の際に意外に思ったことがある。会社の破綻或いは不
振というものは、その会社の弱点ではなく、強みによって発生するこ
とがよくあるということである。まさに、油断による放漫経営の結果
である。
命の長短は体の弱点によるものではなく、養生に気を配るかどうか
による。経営体も特定部門の強みだけをあてにせず、全体のバランス
を取りながら進むべきである。
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆「 土地税制の改正 ― 短期の税率引き下げ 」 ◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
「土地税制」は平成16年度税制改正で、税率の引下げなど大幅な
改正が行われる。
長期譲渡所得の特別控除後の譲渡益に対する税率が26%(所得税
20%、住民税6%)から20%(所得税15%、住民税5%)に引
き下げられることは、既報の通りだが、土地税制はこの他にも多岐に
わたる改正が行われる。
現行の土地・建物等に対する短期譲渡所得の課税は、(1)譲渡益
の52%(所得税40%、住民税12%)相当額(2)全額総合課税
をした上積税額の110%相当額――のいずれか多い税額とされてい
る。また、国等に対する譲渡の場合は、(A)譲渡益の26%(所得
税20%、住民税6%)相当額(B)全額総合課税をした場合の上積
金額――のいずれか多い税額になっている。これが来年度税制改正案
によると、(1)と(2)のいずれか多い方というものが、一本の税
率に統一される。すなわち、譲渡益の39%(所得税30%、住民税
9%)統一税率で課税される。国等に対する税率も一本になり、譲渡
益の20%相当額で済むことになる。
この短期譲渡所得に対する課税の改正は、平成16年1月1日以後
に行なう土地、建物等の譲渡について適用されることになっている。
税率が引き下げられた替わりに、長期譲渡所得の100万円の特別控
除が廃止される。
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆ 「 大風が吹けば 」 ◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
輸入鶏肉業界と牛肉業界に大風が吹いている。肉業界というよりも、
これらの肉を使う外食産業に特に大きな影響が出ている。
牛丼チェーン、惣菜チェーン、焼肉店などを中心に、致命的な打撃
を受けている店が多く発生している。
行政や一般国民は、これからBSEや鳥インフルエンザがどのよう
に広がるか健康の観点から心配している。ところが、関係事業者は、
これから牛肉と鶏肉の仕入相場はどうなるか、供給はどうなるか、売
上高はどうなるかの観点で悩んでいる。
関係事業者の心配は深刻で、その対応策は藁をつかむような、涙ぐ
ましいものまである。新聞報道などによると、例えば牛肉や鶏肉の代
わりになる、豚肉・羊肉・イノシシ肉・ダチョウ肉などからワニ肉ま
で相場の先高感があるという。「大風が吹けば…」というが、まさに
影響が広がっている。
さらに事業者を悩ますのは、消費者の購買行動である。「危ない食
品は止めておこう」という買い控えである。仕入値の高い肉を無理し
て調達しても、肝心な売上高も落ちる。粗利益率と売上高の両方が一
緒に急低下するというダブルパンチである。
関係事業者には厳しい事業環境だが、せめて新しい食材で新メニュ
ーを開拓するチャンスと前向きに捕らえる他はなかろう。