■■ Weekly Fax News 368 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 最低資本金が廃止に ― 1円起業会社はどうなる 」
(2)「 処世の我慢哲学 」
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◆ 「 最低資本金が廃止に ― 1円起業会社はどうなる 」 ◆
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このほど、国会に提出された会社法案には、最低資本金の廃止が盛
り込まれている。会社法施行後は、資本金1円からの株式会社設立が
可能となるわけだ。
その一方で問題となるのが、中小企業挑戦支援法(新事業創出促進
法改正)で認められたいわゆる「1円起業」により設立された会社の
行方だ。
同法では、最低資本金規制の特例を講じており、同法が適用されれ
ば、最低資本金規制に関係なく株式会社・有限会社の設立を認め、設
立後5年間は、最低資本金規制が適用されない。
現在、同特例により設立された会社は2万社を超えている。
ところが、最低資本金が今回の会社法案により廃止され、18年4
月からは資本金に関係なく株式会社を設立できるようになる。この改
正に伴って、新事業創出促進法等も改正となり、この最低資本金規制
の特例規定は全文削除される。
では、現在2万社超ある特例会社は、最低資本金規制が削除される
新会社法の下ではどうなるのか。これは、基本的にはそのままの存続
が可能。ただし、特例会社は、最低資本金に達しない場合解散する等
の旨の定款の定めが置かれているので、定款変更決議が必要となる。
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◆ 「 処世の我慢哲学 」 ◆
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山本周五郎の短編小説に、『百足ちがい』(新潮社「痛快」収録)
というものがある。
主人公である武家の一人息子が寺に預けられ、そこの個性的な和尚
によって、処世は何事も我慢することが大事であることを修行させら
れる。どんなことがあっても怒らず、まず家に帰って3日我慢、それ
でもはらが治まらなければ30日我慢、それでもだめなら3月我慢、
さらに3年までは我慢せよというものである。若いうちはのろまとい
う意味で「百足ちがい」とあだ名で侮辱されているが、やがて藩主か
ら認められて側用人に出世するという物語である。
周囲からひどい扱いを受けたような場合に、人生や事業経営の処世
としては我慢するだけが得ではないが、時には「我慢、我慢、せぐな
騒ぐな、慌てるな」という態度で首尾よくいく場合も珍しくない。
知人のAさんはテナント契約の更新拒否をめぐって大家から不当な
扱いを受け、我慢しているうちに水道設備を破壊されて水の供給を止
められてしまった。3日、3週間は水を車で運んでやり繰りし、「ま
あ、3月の我慢」と言って平然としていた。この時、大家の家族は、
「営業妨害裁判で大変なことになる」と心配していたとのことである。
Aさんの周囲の者は法的救済を準備していたが、大家が折れて水の供
給を復旧した。Aさんの処世術が不気味に見えたようだ。