■■ Weekly Fax News 515 ■■
―――― ◆ 目 次 ◆ ―――――――――――――――――――――
(1)「 Saasが事務所にやってくる ― 中小企業にとって吉か凶か? 」
(2)「 経営ビジョンの共有 」
―――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆「SaaSが事務所にやってくる ― 中小企業にとって吉か凶か?」◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
最近話題になっているIT用語にSaaS(Software as a Service
“サース”)がある。要は、自社にプログラムやサーバ-を持たずに、
サービス提供会社に接続して、その資源を利用するもので、そのメリ
ットは大きい。
(1)毎月の使用料を払うだけで導入が安価
(2)情報の専門技術者が不要
(3)プログラム等の保守作業が不要
(4)比較的簡単にカスタマイズが可能
(5)会計処理、営業支援、顧客管理、ワークフロー処理などの機能
が提供されつつあり、今後さらに拡大が予想される。
正に中小企業が待望しているシステムである。大企業が利用している
ものと同等の機能が安く使えるのだ。
では、サービスを提供する側は儲かるのか。実は家電品の量産など
と類似のビジネスモデルであり、大きな資本を投入して高度なSaa
Sを構築し、一方大量のユーザーを獲得することで回収するものだ。
各ユーザーの個別システムが不要になり、それをサポートしていたS
I業者が失業するということが予想される。手工業から機械化量産へ、
と同じことが起こりえる。
従って中小企業のIT業者は、さらに独自のニッチ領域なり、Sa
aSでは導入できない、各顧客企業のコアな分野での処理など、さら
に独自の領域を開拓しないと、生き残れないことになりかねない。
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆「 経営ビジョンの共有 」◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
「経営ビジョンを明文化しませんか」とX社(宝飾品小売業、社員15人
)の社長に提案した。今後の経営規模や事業分野の方向を定めて経営
計画を作り、社員のやりがいと勤労意欲を高めたいと考えたからである。
ところが社長は、「経営方針や将来の事業分野のことは私の頭の中
にしっかりあるからご心配なく」と、提案に余り関心を示さない。それで
も筆者は諦めずに、社長のビジョンを教えてくれるように話したところ、
次の面談までに書いておくと約束した。
次の面談が面白かった。「頭の中にあるビジョンを書こうとしたら、
心に迷いが出て文章がまとまらない」と言うのである。更に「先生、決意
というのは、人に言ったり、文に書いたりしないとだめだと気づいたよ。
それに、ビジョンは一人合点ではなく、社員や後継ぎと共有しないと使
い物にならない」と、驚くほど変わったのである。
福沢諭吉著『文明論之概略』(岩波文庫)に、「人の議論は集て趣
を変ずることあり。性質臆病なる者にても三人相集れば暗夜に山路を
通行して恐るゝことなし。蓋(けだ)し其勇気は人々に就て求む可らず、
三人の間に生ずる勇気なり・・・」とある。経営ビジョンは、内容を明確
にして全体の人が共有することによって、組織を挙げて実行する勇気
と意欲が湧いてくるものであろう。