■■ Weekly Fax News 737 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 高齢者雇用にかかる検証点 ― 思わぬ事故に注意を 」
(2)「 場所による商売の成否 」
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◆「 高齢者雇用にかかる検証点 ― 思わぬ事故に注意を 」◆
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既報の通り、2013年4月から原則として希望者全員の65歳ま
での雇用確保が企業に義務付けられることになる(経過措置あり)。
該当者にどのような業務に従事してもらうか、賃金体系をどのように
するか、抜本的な対策を早めに検討し始めている企業も少なくないよ
うだ。大きな問題となっている賃金体系の変更だが、賃金の支払原資
は限られているのは確かでも、賃金にばかり目がいっていると思わぬ
ところで事故を起こす可能性がある。
たとえば、トヨタ自動車では作業速度を大幅に落とした生産ライン
を新設する方針だ。これは若年労働者と比較して、体力や判断力、視
力等が低下した高齢者が働きやすい環境を整え、その上で若手への技
能伝承にもつなげるためとのことだ。
生産工場などで高齢者に対する配慮が足りず、思わぬ大事故が起き
た場合でも、企業側の責任が問われる可能性が高い。安全配慮義務が
十分になされていたかかが問われるからだ。高齢者が従事するには危
険な事業場も少なからず存在するため、単にシフトを変える、賃金体
系を変更することだけにとらわれず、高齢者が働く現場を俯瞰して問
題点を洗い出し、解決していく取り組みが求められるだろう。事故を
未然に防ぐ仕組みを、早期に検討しておきたい。
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◆「 場所による商売の成否 」◆
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人の運命(会社や国家の運命も)は「天地人」(天の時、地の利、
人の和)に依るとされるが、商売の成否は地の利(立地条件等)が重
要である。開業相談を受けていつも心配するのは、資料準備に比べて
開業場所の選定が疎かである場合が多いことだ。坂本龍馬は『史記』
の李斯(りし)列伝を読んだことが土佐を脱藩する動機であったと言
う。李斯は秦の始皇帝の丞相になった人である。「役所で厠の中の鼠
が糞便を食らい、人や犬が近寄ると、驚き恐れて逃げるのをしばしば
見たが、蔵に入ると、蔵の中の鼠は貯蔵米を食い、人や犬におびえる
こともなく、広々とした軒下にいるのを見た。・・中略・・人の賢と
不賢は、たとえば鼠のように、ただいる場所のちがいによるだけだ」
(出典:小竹文夫・小竹武夫訳、筑摩世界文学大系7)。そもそも、
商売の成否が立地条件に左右されることに気づかないのは、経営ビジョ
ン(事業分野・規模・システム等)や経営戦略(顧客ターゲットや品
揃え等)の計画が十分に練られてないことに因る。事業内容を明確に
すれば、商売に適する具体的な場所が限定されるはずである。始めか
ら自宅や特定場所(偶然貸店舗が見つかった)等に拘ることは問題で
ある。予め何を観察するかを決めて、現地に繰り返し行くことが必要
だ。