■■ Weekly Fax News 774 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 馬券購入行為から生じた所得 ― 例外的に雑所得と認定 」
(2)「 数値による経営管理 」
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◆「 馬券購入行為から生じた所得 ― 例外的に雑所得と認定 」◆
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既に新聞記事等で報道され、喜んでいる読者も多いかもしれないが、
この判決は極めて特殊な事案を取り扱ったもので、一般化できるもの
ではない点に要注意である。まず判決は、馬券購入行為から生じた所
得は、原則として一時所得とする。一時所得とは、営利を目的とする
継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務又
は資産の譲渡の対価としての性質をもたず、一時的・偶発的利得であ
る点が特質である。この立場からは、当り馬券の購入費用のみが、所
得を得るための必要な支出すなわち必要経費として認められることに
なる。これに対し、雑所得だとはずれ馬券の購入費用まで、必要経費
と認められる。判決が、本件被告人Aの所得を雑所得と認めたのは次
のような事実による。判決はまず、所得発生の基盤となる一定の源泉
から繰返し収得されるものは一時所得ではないとし、所得源泉性を認
めうるか否かは、当該所得の源泉性を認めるに足りる程度の継続性、
恒常性があるか否かによると、判断基準を明示した上で、Aの馬券購
入行為は大量かつ継続的、機械的なもので、競馬を娯楽としてではな
く、資産運用の一環として行われており、継続性・恒常性を有するか
ら雑所得とした。なお、本判決に対しては、検察官が控訴している。
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◆「 数値による経営管理 」◆
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孫子兵法に、勝利する軍の五つの大切な事柄というものがある。す
なわち、「一に度(たく)、二に量、三に数、四に称(しょう)、五
に勝(しょう)」である。戦場の広さ、投入すべき物量や兵員数、敵
方の兵数や能力等を勘案して勝算を探ることである(金谷治訳注『孫
子』形篇第四、岩波文庫参照)。
さて、昨年筆者は某金融機関と中小企業再生支援協議会の要請を受
けてX社の経営改善計画策定支援に関与した。リスケ等を受けている
企業が今後5年程の経営改善計画を策定し、全関係金融機関の承認を
受けて正常先に戻ることを目指すのである。計画策定を通じて一貫し
ていることは、現状把握を厳しく捉え、全ての対応策(収益性
向上、コスト削減、設備投資や借入金の圧縮、不良資産売却、店舗
の閉鎖等)を具体的に数値で示す必要がある。例えば、「売上原価や
人件費の節減に努力します」では通用せず、「次のような手法で仕入
先や販売先を見直し、3年後までに粗利益率を~%にします」「~期
には、役員報酬(給料)を~円減額します」等としなければならない。
以上、Ⅹ社・協議会・金融機関が協議して一致した数値目標により計
画を策定する。しかし、数量・金額や実施時期が中々決まらず、X 社
代表はこれまで数値による経営管理を怠っていたことを痛感したよう
だ。