■■ Weekly Fax News 796 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 錯綜する賃上げ情報 ― 自社の身の丈で判断を 」
(2)「 仕事と自尊心 」
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◆「 錯綜する賃上げ情報 ― 自社の身の丈で判断を 」◆
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来春の消費税率引上げを受け、賃金を上げるべきとする報道が目に
つくようになった。大手企業では政府の方針に同調し、賃上げを表明
するところもあるが、中小企業ではなかなかそうもいかないのが現実
だろう。連合ではすべての組合が月例賃金にこだわり、1%以上の賃
上げを求める方針だ。さらに、「より重要なことは、中小企業で働く
仲間や非正規労働者の賃金底上げの実現」との方針も打ち出しており、
中小企業の経営者にとっては厳しい交渉を求められることもあり得る
かもしれない。
現在の賃金動向を見てみると、財務省が発表した法人企業統計調査
では今年7~9月期の全産業人件費は前年同期比4.7%減となり、
厚生労働省の発表した10月の現金給与総額は前年同月比0.1%増
となっている。賃金が上がっているのかどうか、何を信じていいのか
わからないような状況だが、基本的に信じるべきは自社の経営状態と
置かれているマーケットの動向以外にない。世間の動向は否が応でも
気になるところだが、背丈に見合わない賃上げは経営的に大きなダメ
ージとなる。その一方で、あまりにも余力を残しすぎるようでは、従
業員のモチベーションも上がらない。来春までに、自社の身の丈を見
極めてできる限りの賢明な対応を心がけたい。
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◆「 仕事と自尊心 」◆
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宮本輝著『流転の海第4部』(新潮文庫)の中で、主人公松坂熊吾が
9歳の息子に、釈迦と提(だい)婆(ば)達(だつ)多(た)(人前で釈迦から
酷く叱責され、自尊心を傷つけられて教団を怨んで地獄に堕ちた人)
の関係を話して「自分の自尊心より大切なものを持って生きにゃあい
けん」、と言い聞かせる場面がある。
仕事上の失敗や職場の人間関係不和は、自尊心にこだわった為に起
こるものが多いのではなかろうか。勿論、自尊心を後回しにすること
は容易ではない。例えば、新入社員は仕事にまだ不慣れの為、上司や
先輩から注意をされたり、時には乱暴な口調で叱責されたりすること
が珍しくない。結果、自尊心を傷つけられて辞めたり、上司に反抗し
たりして躓つまづく者もいる。このような時、自尊心以上に守るべき
もの(家族の生活安定、技術の習得,自己の地位や将来設計等)があ
れば、強い忍耐力で我慢出来る。その他、仕事には立場の違い(接客
する店員とお客、元請け業者と下請け業者、医者と患者、市役所窓口
職員と市民、等)があるので、一種の上下関係が生じて態度や発言に
依って自尊心を傷つけられることもある。この場合も自己の立場を認
識し、自尊心よりも大切なもの(仕事本来の目的や上位の価値目標)を
意識していれば、職業生活が簡単に破綻するようなことはない。