■■ Weekly Fax News 804 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 大企業を中心にCRS調達の動きが活発化 」
(2)「 戦わず商いを続ける 」
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◆「 大企業を中心にCRS調達の動きが活発化 」◆
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建設業許可申請をめぐり、申請企業が社会保険に適正に加入してい
るかどうかを確認する動きが強まっている。社会保険制度を担ってい
る厚生労働省ではなく、国土交通省が主導するこの動きは、2017
年度までに建設業許可業者は社会保険加入率を100%にすることを
目標としている。
このように法律的に求められている要件をきちんと満たしている企
業にのみ仕事を発注する、仕事が継続的に行えるようにすることは、
社会的責任であるという考え方が浸透しつつあるようだ。大企業でも
この動きが活発化しており、先日も凸版印刷が調達・発注先の企業に
対して労働者の人権や労働環境に配慮するよう求めることが明らかに
なった。一定の基準を満たせない場合、取引を解消することもあると
いうことだ。地方公共団体等でも同様の動きが始まっており、民間企
業への事業発注にあたり、規定の労務監査を行うこともある。
たとえば、上場企業がかなり悪質なブラック企業へ多額の発注を行
っていた場合、株主総会等でその責任を問われることも予想される。
そのブラック企業がコスト的に最も優れていたからという言い訳は通
用しそうにない。安くしろ、でも従業員を大事にしろと求められる厳
しい時代になりつつあるようだ。
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◆「 戦わず商いを続ける 」◆
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A氏は150年続いた老舗和菓子店の6代目店主である。店を継い
で約50年になるが、筆者は「これまでの経営で本当に大変だったこ
とは何ですか」と尋ねたことがある。その回答は、「30年ほど前、
同業の仲間が多店舗展開を始めたので、自分も土地の値上がりに勢い
を得て、3店舗体制から10店舗に増やした。社員も20人体制から
60人まで増やし、戦争気分で同業者と競争した。最初の5年間は勝
ち続けたが、結局完敗した。伝統の味が失われ、職人の力量が落ち、
昔からの愛顧客が離れ、地域住民の親しみが薄れてしまった」という
ものだった。中国戦国時代の兵法書『呉子』の中に、「戦いて勝つは
易く、勝を守るは難し」とある。毎年過激な戦略を策定して、自社以
外は全て敵のような目標を掲げる会社があるが(目標を持つことは大
事)、果たして経営陣や社員が快く働けるだろうか。戦争のような気
持ちで商売を続けていると、勝ち続けることは困難であり、最後は破
綻する可能性が高い。前掲の『呉子』にも、戦争してしばしば勝って
天下を得る者は稀であり、滅亡する者の方が多いと述べている(天野
鎮雄著『孫子・呉子』新書漢文大系・明治書院)。本来、商売はただ
勝ち負けを競うものではなく、自己の信条に従って日々の務めを続け
ることである。