【 社長通信 №1 】
2002年12月・2003年1月合併号 vol.1
1 不況時の経営戦略
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不況時の経営戦略のポイントを考えよう
-タナベ経営 田辺昇一氏によれば-
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最近の注目すべきは金融の危機である。金融の危機には4段階
あり、1段階は、株の暴落で、銀行、保険会社への影響がまだ隠
されているという段階。今は第2段階で、皆、銀行、保険会社が
危ないということを知っている。第3段階はどうかというと、心
配で預金を引き出す、保険の解約をする。最終段階の4段階では、
銀行を封鎖するということである。バンキングホリデーというわ
けで、銀行は全部閉まってしまう。現金封鎖をする。新円の切り
替えをする。1946年2月17日にありました。そういうこと
が刻々と近付いている状況です。今、特に日本では、預金を通じ
て決済が行われているので、ペイオフが2年延期になりましたが、
預金をみんな引き山したら、大抵の銀行はバンザイです。厳しい
環境です。
今は70年ぶりの大不況です。株は世界同時安で、世界全体の
株が1500兆円暴落したという。更に2002年1年間で消失
した株式価値は550兆円と過去最大(日経1/3)である。大変な
危機的状態になっています。そこで、どうやって生き残るかとい
うことです。因果応報で、原因あっての結果ですから、これから
は誰も助けてくれない。食べ物がなくなってくると、ネズミでも
集団自殺する。それで淘汰される。
今は銀行もオーバーバンキングで多すぎます。シャッタースト
アが多くなりました。このオーバーをどうやって片付けるかとい
うことです。誰も救ってくれない。経営者として、これからどう
すべきか。上場会社も一週間に一社つぶれていますが、これから
一週間に二社つぶれるというような状況になってくるでしょう。
中小企業は特に、貸し渋りになっていますから、これから自殺要
因がどんどん増えてきます。
そこで原因他人論、原因自分論というのがありますが、大体失
敗する人は、人のせいにする人が多い。原因他人論の人は、人が
らみですから非常に辛い立場にある。成功する人は原因自分論で、
原因はうちにある、どこがまずいのだと、事実を正しくつかむ、
自己診断が必要になる。手の内は自分の中にあるわけだ。そのた
めには事実を正しくつかむ、ウソをつかない。経営者の通信簿は
決算書である。決算書は会社の全てを物語る。「決算診断提案書」
を必ず診て下さい。
そこで第一には、お金のことが大事で、借入金と自己資本の比
率の問題が重要です。特に今銀行取引が大変ですから、銀行との
関係をうまくやっておかないと銀行が見放します。最近は担保で
貸してくれません。経営者が自分の考え、経営理念や決算診断、
経営計画など将来に対する考え方、実際の会社の中身を正直に銀
行にお話するという姿勢が大事になります。残す会社か潰す会社
かということは第三者が厳しくみるわけです。そのためには、と
にかく赤字を出さないことです。融資監督庁も赤字企業には金を
貸すなということになっています。
問題は利益をどう出すかで、もの選びです。やっている商売を
もう一度見直し、検討する。かつては良かった商売が今は無理だ
ということになり、どの商売も今は過剰ですから、厳しいです。
赤字の原因は腰が高いことです。腰を落とす。なりふり構わず、
この際もう一度総点検して、もうからないものは止める。見栄も
教養も捨てて、どれで生き残るかということの会社の商品点検を
して、絶対うちはこれで生き残るということの勝てればの発見で
す。そのためには品質とコストとサービスとスピードの点におい
て、もう一度足元を見て、ライバルに勝つ必要があるでしょう。
今こそ、大事のようです。
黒字が悪くなっているので、月次決算を急ぎ、毎月毎月、単月
黒字を目ざしていく。そのためには20日締めの3日以内には、
今月もうかったかどうかの手をすぐに打っ必要がある。
生産性なくして企業の繁栄はありませんから、もう一度流通業
でもメーカーでもどんな商売でも、人を使い、モノも使い、金も
使って、時間も使ってやっていながら、なぜもうからないのか?
ということ、足元をよく見て、総点検して、ダメなものはやめて
しまう、得意な仕事があるならば、それをしっかりやろうという
ように、もう一度生産性の点検をする必要があると思う。
いずれにしても最後はヒトです。今は「経営者」に金を貸す時
代です。社長が替わらなければ融資をストップするという銀行も
あるくらいです。いわゆる経営者のリストラ時代です。攻めは開
発と営業です。守りは財務と管理です。もう一度足元を見て、う
ちは誰が経営者として向いているのか。適材適所に配置されてい
るのかどうか。最後は経営です。うちは技術が弱いのか、営業な
のか、マーケティングなのか、一番弱いところを補強して、利益
の出てゆく基を検討する必要がある。
なかなかもうからない、赤字である、苦しいということは、そ
れはヒトがやっているわけです。経営者、幹部のやり方を総点検
する。「田辺昇一氏」は強い言葉で語ります。全て原因は人間に
あります。中小企業、零細企業、大企業、いろいろありますが、
利益というものは正直なものです。 「全てを守れば、全てを失
う。」昔やっていたからと、そのままの延長ではなしに、まずは
捨てるものは捨てる、残すものは残す。重点・集中・徹底が生き
残る方法であります。ピンチになった時には、早めに生き抜くこ
とです。病と一緒で手遅れが一番まずいです。単月黒字。赤字は、
徹底的に調べて儲からないものはやめてしまう。
どうしたら儲かるのか。お得意さんの意見をよく聞いて、なる
べく勝ち組みになることが必要であるが、今は7割が赤字ですか
ら、地域企業でうちは何番目であるかということを確認すること
が大事です。1番があって2番がないぐらいの気持ちを持つこと
です。
札幌の“白い恋人”という会社は、社長さんが凝り性で、とこ
とん自分でチョコレートのお菓子を開発する。ラベル一つでも検
討する。というほどの凝り性で、自分が納得するまで、試してみ
る、こういう方がお客様の満足するものをつくるわけです。“好
きこそものの上手なれ”で、研究する必要があるのではないかと
思います。
次に顧客の絞込みが大事です。顧客に対しては「顧客メリット
を強力に打ち出す」「アフターサービスやビフォアーサービス、
コンサルティングサービスに力を入れる」。特に時代に合った顧
客ニ一ズを十分に把握することが大切で、言われる前の対応が、
ライバルとの差別化要因となります。
コンサルテイングサービスは、問題解決ができる提案型サービ
ス等で、顧客が喜んでくれます。
こんな考え方で進むことが経営にとって大事なことです。
2 今月一番刺激を受けたこと
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転換期の心構えはい“いところ集め”
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私が愛読している上甲晃さんの「志ネットワークのデイリーメ
ッセージ10月28日号」に、とてもいい記事が載っていました。山
形県で農業を営む菅野芳秀さんが素晴らしいことをおっしゃると
いうので、上甲さんが取材した時の言葉です。
この先、どのように進んだらいいかわからない時期は、リーダ
ーが悪いのではなく、リーダーも答えがわからないのです。最近、
日本経済の活性化策を新聞やテレビで見ると、それを強く感じま
す。こういう時期は転換期なのです。
「こんな時は批判と反対からは何も生まれない、常に対案と提
案を出し合う。夢づくり・希望づくりは、皆の“いいところ集め”
で道が開かれる。批判していても仕方がない。」と菅野さんはお
っしゃっています。全くその通りで「対案と提案」が必要です。
“いいところ集め”とはいい言葉ですね。