■■ Weekly Fax News 840 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)『 運・鈍・根における「鈍」』
(2)「 事業承継と養子縁組 」
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◆『 運・鈍・根における「鈍」』◆
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運・鈍・根(うん・どん・こん)とは、事業に成功する人の三要素
で、運に恵まれて根気よく耐えて努力する人のことである。ただ「鈍」
は、文字通り単純に捉えると真意がよく分からず誤解するかもしれな
い。前述のように、元々は運に恵まれ、鈍感なほど根気強く物事に取
り組む人という意味であろうが、「鈍」とは何物にも動揺しない確固
とした信念があり、豊かな個性と他人への愛想(あいそ)や強い思い
遣りを持っているということではなかろうか。
例えば、期待された仕事の成果が出ない時、同僚から馬鹿にされた
りしても一緒に笑って平気な人がいる。次は必ず成果を上げて見せる
という強い自信かもしれない。また、お客様から苦情や注文を付けら
れたり、上司等から厳しく注意されたりしても、その後は平然と仕事
に取り掛かる人がいる。普通の感覚からは、時に鈍感な人と思われる
かもしれないが、実は切り替えの早い仕事熱心な人と評価しても良い
だろう。注意を要するのは、自分に対して鈍は良いかもしれないが、
他人に対して鈍では困るということだ。経営の神様と言われた松下幸
之助氏は、問題を起こした社員を厳しく叱責した後は、その上司を呼
んで部下を慰めてやれと指示をした。「鈍」とは自分には厳しく、他
人には寛大にすることだ。
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◆「 事業承継と養子縁組 」◆
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歴史小説等には、大名や旗本の家等を存続させる為に、縁者から養
子を迎える場面がよくある。武家に限らず、商人や農民も家を存続さ
せる養子制度を活用した。現代でも子の無い経営者等が養子縁組によ
って事業承継を図ったり、娘の夫を後継者にしたりすることがある。
X社(印刷業、株はA社長が65%、B専務が35%所有)のA・B兄
弟は共同創業者として30年間比較的良い業績を積んできたが、Aは
子が無かったので親戚の子C(当時大学生)を養子とした。Cの大卒
後、AはCを自社に入れようとしたが、Bが反対したので中学の教員
になった。Bの息子はX社に入って、現在幹部社員になっている。そ
の後、Aが5年後の引退を表明すると、C(36歳)は教員を辞めて
X社に入社した(1年後に取締役)。AはCを後継者に考えているが、
経験不足を理由に(本音はCが養子であること)Bは反対である。B
がAの持株を一部買取ることを申し出たがAは断った。一般に親族承
継は親族外承継(中小企業全体の4割程)より容易と言われる。しか
し、後継者さえいれば安泰というわけではなく、早めの計画を策定し
て、関係者の了解を得ながら承継を進めることが大切である。X社の
ようなケースでは、将来C社長の就任を巡って紛糾する恐れが大きい。