■■ Weekly Fax News 703 ■■
――――◆ 目 次 ◆―――――――――――――――――――――
(1)「 雇用にかかるコストの行方 ― パート労働者の取扱い留意 」
(2)「 上には上、下には下 」
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◆「 雇用にかかるコストの行方 ― パート労働者の取扱い留意 」◆
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厚生労働省はこれまで厚生年金などの社会保険に加入していなかっ
た労働者の加入要件を現状の週30時間程度以上の労働時間から引き
下げる方針を明らかにしている。実現すれば、企業にとっては社会保
険加入に係る企業負担が発生するため大きな負担増要因となる上、場
合によってはパート労働者などが加入要件を満たさない程度まで労働
時間を削減することを要望することにもつながりかねず、コスト増の
みならず、人事管理上も大きな問題となることは間違いない。そのた
め、実現前にコストの問題と人事管理について綿密なシミュレーショ
ンを行っておくことが望ましい。特に多くのパート労働者が働く企業
にとっては死活問題となりかねない。
さらに、協会けんぽの健康保険料率も平成24年度から全国平均で
10.0%に引き上げられる。3年連続の引上げとなり、企業にとっ
ては負担増要因だ。一方、平成24年4月1日から雇用保険料率は引
き下げられることになった。こちらは当然に負担減要因となる。現状、
一般の事業の場合、労使合計で1,000分の15.5の保険料率は
1,000分の13.5に引き下げられる。新年度から雇用にかかる
コストは増減ともに発生する。企業負担の行方を事前に把握しておい
た方がよいだろう。
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◆「 上には上、下には下 」◆
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子母沢寛の小説『おとこ鷹』下巻にこんなセリフがある。「それを
お信が井戸端で磨(と)ごうとしていると、そこへ面やつれの女がこ
そこそ忍んでやって来て、その磨汁(とぎじる)を恵んでくれという
のだ。な、いいか、やっと米を買う人間がある、その磨汁を貰って、
これを煮てひもじいのを堪える人もある。これが世の中だ。」(筆者
注:お信は勝海舟の母。貧乏でやっと米を少々買った時の父勝小吉の
セリフ。)A氏(86歳、洋品店経営)は長年某商店街の世話役をし
ているが、逢うたびにこちらの気持ちが和む人物である。最近の商店
街は悲観的な話題が多いが、A氏の話を聞いていると不思議に元気が
出てくる。例えば、昭和40年頃、大型店が進出して商店街が全滅に
なりそうだったが、全店が毎晩イベントをして乗り切った話は有名で
ある。また、終戦直後は店に売る物がほとんど集まらず、親戚や友人
宅を回ったり、こっそり遠方の同業店に買い出しに行ったりしたと言
う。今は真剣に工夫すれば、売る物がいくらでもあるので昔より商人
は楽だと言う。人の境涯は区々なので、経済や健康等が思い通りにな
らず、やる気を失ってしまうこともあろう。しかし、自己の境涯が厳
しい時はより下を見て諦めず、心境を新たにして脱出のチャンスを探
るべきである。